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『胸騒ぎの恋人』(2010)

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親友のマリーと同じ彼、ニコラを好きになってしまったフランシスの視点で描かれる本作でドランは、恋に落ちる過程の検証を試み、片思いの苦悩に肉薄する。2人は内心ニコラにぞっこんなのに悪口を言って相手の腹を探ってみたり、ニコラの思わせぶりな仕草に期待を持ったり…。押し寄せるのは、もどかしさ、ほろ苦さ、ジェラシー、探り合い、駆け引き??。出会いに始まり、涙で終わる、切ない恋心。ティーンなら誰もが味わうポエティックなカオスを、ポップなカラーアート、ヴィンテージの服、クラシックな音楽で再現。ドランならではの異形な恋のスタイルがスクリーンに溢れ出す傑作ラブストーリー。

 (amazonの作品紹介より)

 

ドランというのは、うら若き天才として知られる(そうな)グザヴィエ・ドラン監督のこと。ケベック出身のギリシャ系カナダ人で1989年生まれ。つまり現在26歳。この映画公開時は21歳…。

 

まるで姉弟のように仲良しの男女が、ある美しい青年の出現によってバランスを崩していくという物語です。ゲイのフランシスを演じるのはドラン監督自身。ちなみに脚本を書いたのも監督なら、衣装を選んだのも監督らしい。世の中にはモーツァルトみたいな天才がいるものですね。

 

この映画をみて、わたしはひたすらビックリしました。何にかというと、その観やすさに。アート寄りの作品と聞いていたので、てっきり難解なストーリーで煙に巻かれた気分になって100分過ごすのだろうと予測していたのですが、嬉しいことに裏切られました。ストーリーは驚くほどシンプルで、テーマも「片思いの滑稽さ」という人類みんなが経験する事象。中学生でもちょっと気の利いた子なら理解できるのではないか、という分かりやすさです。

 

ただ、その描き方はとてつもなく鮮烈。色使いも音楽も鮮やかとしかいいようがありません。わたしは普段スローモーションという技法が陳腐で大嫌いなのですが、この映画で認識を変えました。あ、こんなにかっこよくなれるんですね、と…。


映画『胸騒ぎの恋人』予告編 - YouTube

 

 

映画を観てから数日が経つのですが、いくつかのシーンをしょっちゅう思い出します。冒頭で、マリーとフランシスが「あのナルシストのイケメンだれよ」とニコに興味を持つところ。フランシスがニコのために、彼の好きなオードリー・ヘプバーンのポスターを買うところ。傷ついたマリーが煙草を吸おうとして、うまく火をつけられないところ。時間が経つにつれて印象が薄まるどころか、むしろ映画について思いを巡らす時間が長くなっていってます。まるで毒がじわじわと全身に回るように。

 

最後にちょっと言っておきたいことがあります。作中で描かれる男女のラブシーンと男性同士のラブシーンについて。バッハの無伴奏チェロ組曲をBGMに、真っ赤(あるいは真っ青。緑もあった?)に染め上げられた画面の中に人間の身体が浮かび上がる幻想的なシーンなのですが、どうみても男性同士の方が魅力的に撮られていると思うのです。ドラン自身ゲイだそうですが、彼の男性身体への愛情をひしひしと感じました。しかし、女性の身体にももうちょっと平等に愛を注いでもいいんじゃないかな。女性を代表して要望しておきます。この映画を観る限りでは女性の完敗でした。