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踊り明かそう

バレエのレッスンは、座禅に似ている。

スタジオで他の生徒さんたちと一緒に、前へ右へ脚を振り上げながら、ヒキガエルさんはこっそり思います。まるで何かの修行のよう。訓練しているのは<余計なことを考えない>。「前のひとの脚はあんなに高く上がってるのに…」とか、「わたしの動きって周りから見ればさぞ笑えるんだろうな…」とか、そんな雑念が湧くと、途端にフリを忘れます。そして、みんながつま先立ちしているのに、自分だけしゃがみ込むなどという惨事が起こります(これは目立つ)ほら、今も考え事してたからカウントを間違えた。


以前先生に、「自分の動きに集中しなきゃ」と言われた話を書きました。あれから二ヶ月近く経って、ヒキガエルさんはその意味を実感しつつあります。余計なこと、とくに他人のことを考えないことの大切さを。自分に集中できているときは、ちゃんと足を動かしていられる。でも「わたしって一番ヘタだよなー」なんて雑念が浮かんだ瞬間、覚束ないながらも自分なりに踏めていたステップが、がちゃーんと崩壊。どんなにヘタでも、不様でも、自分の動きに集中しなければ。このことをヒキガエルさんは、身体を使って学んでいます。

 

スタジオの外、実生活でも、ヒキガエルさんは決して優美なステップを踏めているとは言えません。他のひとと比較して「わたしの人生こんなんでいいのかなぁ」「みんな立派になったのに、ヒキガエルさんはただのカエルのまま…」と思うこともしょっちゅうです。でも最近ではそんなとき、レッスン中みたいにちょっと背筋を伸ばしてみます。そして「わたしのステップに集中しなきゃ」と思うのです。どんなに不様でも、情けなくても、ヒキガエルさんの踊りをおどらなきゃ。それが足を止めない唯一の方法だから。