紅茶の記憶

キャンベルズ・パーフェクトティーというお茶があります。紅色の鮮やかな、アイルランド生まれの素朴なお茶です。今朝この紅茶でミルクティーを飲みながら、あるお店のことを思い出しました。

 

京都に住んでいたときに近所のカフェに通っていました。どれくらい行きつけていたかというと、多い時で週に5回。仕事帰りにお茶に寄ったり、休日にモーニングを食べてそのまま持参したパソコンで語学学校の課題を片付け、更にそのままそランチになだれこんだりしていました。

 

店主は私より少し年上の女性。落ち着いたお店の雰囲気を体現したような、控えめで優しいお姉さんでした。私が膝掛けを出したら、何も言わずにそっと暖房のスイッチを入れてくれるような人です。

 

通ううちに段々二人でおしゃべりをするようになりました。お姉さんがお店を出すようになった経緯を聞いたり、私の将来の夢を聞いてもらったり。他のお客さんのいない午後ののんびりした時間に時々おしゃべりを楽しんで、その後はお姉さんが厨房で果物を煮る音を聞きながら、テーブルでパソコンをタタタと打って勉強していました。

 

おやつ名人のお姉さんが作る焼き菓子やケーキを思い出します。柚子のスコーン、クランベリーとホワイトチョコのスコーン、ビスコッティ、きなこのほろほろクッキー、白桃とチョコのロールケーキ、リンゴのタルト、金柑とチョコのタルト、グレープフルーツのタルト。パフェには手作りのクッキーやスパイスの効いたブラウニーがトッピングされていました。

 

クリスマスや誕生日にはそのお店でケーキを頼みました。受け取りに行くと、イチゴとブルーベリーをたくさんのせたケーキが出てきます。お姉さんは白い箱をいつも違うラッピングペーパーとリボンで飾って渡してくれました。

 

引っ越す直前の誕生日のケーキを頼んだ時には箱にお姉さんからのメッセージカードがついていました。新生活の幸運を願ってくれた内容でした。心のこもった言葉が嬉しくて、そのカードは今でもお守り代わりにサイフに入れています。

 

そんなもろもろの全てを、いつもお店で飲んでいたこの紅茶の香りで思い出しました。味覚が蘇らせる記憶の、なんと温かなこと。